ニオス 湖 の 悲劇。 湖水爆発の謎を解く カメルーン・ニオス湖に挑んだ20年

ニオス湖

ニオス 湖 の 悲劇

ニオス湖の位置 地形図 ニオス湖(ニオスこ、: Lake Nyos)は、のに所在する。 上の活火山であるの頂上に位置し、が形成したが湖水を堰きとめている。 湖底の地下にはがあり、湖水中に CO 2 を放出している。 このような形で二酸化炭素を含有する湖は、ニオス湖のほかには、同じくカメルーンの ()とのの2例しかない。 、を起こしたニオス湖から大規模な二酸化炭素の雲が発生し、近隣の村落の住民1,800人および家畜3,500頭が犠牲となった。 その後対応策として、湖底に5本のパイプを通し、そこから地表へ直接ガスを抜くという構想がたてられた。 現時点では、5本のパイプのうち1本が完成している。 今日では、天然ダムの劣化による脅威も生じている。 やなどによってダムが決壊した場合、に至るまでの村々を飲み込むが発生するものと予想されている。 形成の過程 [ ] ()に位置するニオス湖の外周はほぼ円形のであり、が地下水によって急激に冷やされたことによるが元となっている。 ニオス湖のマールは400年ほど前の噴火の際に形成されたと考えられており、周囲長1,800m、深さ208mである。 この地域では数百年前からが活発であり、によってとが分断された約1億1千年前から、やや緩やかではあるもののもまた少しずつ浮き上がりつつある。 この動きは ()として知られており、の膨張のため、カメルーンを貫く一本の線に沿ってが地表に湧き出してくる。 もまたこの断層にある。 ニオス湖は古い溶岩流との残骸に囲まれている。 湖水は火山岩からなる天然ダムによってせきとめられている。 最も狭隘なところでは、壁面の高さが40m、幅が45mほどである。 ガスの飽和 [ ] ニオス湖は二酸化炭素で飽和していることが確認されている世界で3つの湖の中の一つである(他2つは、ニオス湖から100kmほど離れた場所にある ()と、にある)。 この地帯の地底に存在するマグマ溜まりからは大量の二酸化炭素が発生しており、これが湖底から染み出してニオス湖の湖水に9千万トンの二酸化炭素となって溶け込んでいる。 ニオス湖は温度によって分けられる複層構造を持っており、水面に近い層の水ほど密度が低く、湖底に近い層の水ほど冷たく密度が高い。 長期間にわたって染み出し続けた大量の二酸化炭素は湖底付近の水に溶け込んでいる。 平時、湖は安定しており、二酸化炭素は深層に溶け込んだ状態でとどまっている。 しかしながら、時が経るにつれて湖水は二酸化炭素でし始め、やなどの出来事をきっかけとして、大量の二酸化炭素が突発的に噴出する可能性がある。 1986年の災害 [ ] 窒息死した牛。 二酸化炭素の突発的な噴出はにマヌーン湖でも発生し、地元の住民37人が死亡したが同様のケースがニオス湖において発生しうるとは予見されていなかった。 しかしながら1986年8月21日にニオス湖で湖水爆発が発生し、それが引き金となって160万トンの二酸化炭素が大気中に放出された。 二酸化炭素は近隣の2つのに勢いよく流れこみ、20km 圏内にいた約1,800人と3,500頭がまたはで死亡した。 また約4,000人の住民がこの地域から避難したが、その多くがガスを原因とする呼吸障害や、などを訴えた。 何が原因となってこれほどに大規模なガスの噴出が起きたかは不明である。 大部分のはが原因と推定しているが、中には小規模なが湖底で起きたためと考えている学者もいる。 第三の説として、湖の片側に偏って雨が降ったことが湖水のを引き起こしたという説もある。 いずれの説を採るにせよ、湖底水深による加圧下で飽和に達していた水塊が、急激に水面近くに湧き上がった、と考えられている。 結果、水圧から解放された二酸化炭素がまさに炭酸飲料の栓を抜いた様に、大気中に噴出したと見られる。 噴出したガスは1km 3に上ると考えられる。 二酸化炭素は空気よりも重いため、山の斜面に沿って流下しながら周囲の空気を追い出し、放散するまでの間に住民と家畜を窒息死させた。 通常時、湖水の色は青く見えるが、ガスが噴出した直後は湖底部の鉄を多く含んだ水が水面近くに上昇して空気に触れ酸化したため、赤く変化した。 水位が約1m下がったのは、それだけの量のガスが放出されたことを示す。 ガスの噴出は同時に湖水のをも引き起こしたものと思われ、近くの樹木はなぎ倒されていた。 ガス抜きの試み [ ] 災害規模の大きさから、どうすれば同様の災害を防止できるかという研究が大いになされた。 湖水に含まれる二酸化炭素の推定量から、ガスの放出は10年から30年のサイクルで発生すると考えられた。 もっとも、近年の研究では天然ダムの決壊に伴う湖水の流出がもし起きた場合、湖水中に二酸化炭素を封じ込めている水圧が減少し、ガスの放出がもっと早い時期に起きる可能性があることも指摘されている。 そこで、湖の深層に5本のパイプを通し、コントロール可能な規模でのガスの放出を継続的に促すという対応策が考案された。 国際的協力により1本が完成し、湖の深層の水をこのパイプを通して水面近くに吸い上げることにより人為的に発泡させ、湖水の二酸化炭素が少量ずつ放出されるようになった。 将来的には、二酸化炭素の最大量を減少させることで湖水爆発を完全に防止することが期待されている。 ガス抜きはから順調に続けられている。 類例 [ ] ニオス湖の惨劇の後、アフリカの湖で他に似たような現象を引き起こす可能性があるものがないかどうかが調査された。 その結果、のという、ニオス湖の約2000倍もの広さがある湖もまたガス過飽和状態にあることが発見され、地質学者たちは約1000年ごとにガス災害が起きている痕跡を発見した。 近隣のがに噴火し、その流が湖に流れ込んだとき、ガス噴出の恐れが高まったが、幸いにも、二酸化炭素が溶け込んでいる層に到達する前に溶岩が冷えて固まったため、大事には至らなかった。 天然ダムの劣化 [ ] 、の地質学者であるイサーク・ニィラは湖水を堰きとめている火山岩の天然ダムが近い将来に崩壊する恐れがあることを発表した。 ダムは湖水の侵食を受けており、上部では穴や空洞が出来ており、下部ではすでに水漏れが始まっていた。 かつてニオス湖形成の原因となった地震活動が、今度は湖の外壁を崩壊させる可能性があり、それに伴って流出する5千万立方メートルの水が洪水となって下流地域であるカメルーンの北西州、ナイジェリアのとに襲い掛かる結果となる。 ニィラの推定によれば、被害想定地域に住む人々は1万人を超すといわれている。 カメルーン政府は地質鉱山研究所のグレゴリー・タンユィの談話を通じてダムの劣化を認めたが、それが今日明日の脅威をもたらすものではないと発表した。 オラフ・ヴァン・ドゥインとニサ・ナーモハミッドが率いるの調査チームは、2005年の9月に3日以上かけて調査を行い、ダムの縁が傷んでいるのを確認した。 ヴァン・ドゥインは10年から20年の間にダムの崩壊が起きると考えている。 ダムの崩壊を回避する方法の一つは、ダムを補強することである。 もっとも、これはかなりの時間とかなりの費用が必要とされる。 また、工学技術者は水路の掘削を模索している。 湖水の水位を20m下げることができればダムにかかる水圧は劇的に減少する。 参考文献 [ ]• Cotel A, A trigger mechanism for the Lake Nyos disaster, American Physical Society, Division of Fluid Dynamics Meeting, November 21-23, 1999. Decker and B. Decker, Volcanoes, 3rd edition, WH Freeman, New York, 1997. Tansa Musa, "Cameroon dam nears collapse, 10,000 lives at risk," , August 18, 2005. "Cameroon scientist denies dam about to collapse," , August 23, 2005. Tansa Musa, "Cameroon dam could collapse in 10 years-UN experts". , September 28, 2005. Sano Y. , Kusakabe M. , Hirabayashi J. et al, Helium and carbon fluxes in Lake Nyos, Cameroon: constraint on next gas burst, Earth and Planetary Science Letters, v. 99, p. 303-314, 1990. Sano Y. , Wakita H. , Ohsumi T. , Kusakabe M. , Helium isotope evidence for magmatic gases in Lake Nyos, Cameroon, Geophysical Research Letters, v. 14, p. 1039-1041, 1987.

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ひぐらしのなく頃に

ニオス 湖 の 悲劇

1986年8月21日 アフリカのカメルーン共和国で全く新しい自然災害が起こった。 と呼ばれる湖で、「湖水爆発」が起こった。 「ニオス湖」はカメルーン西部にある湖であり、元々「火口湖」と呼ばれる湖であるのだが、そのものも知られていなかったため、その周辺にいた住民1,746人、さらには多くの家畜が死亡する大惨事となった。 本書はその原因と引き金など、「湖水爆発」の謎とともに、災害のメカニズムと対策方法についてを著者の体験をもとに記している。 第1章「ニオス湖ガス災害」 ニオス湖の湖水爆発は最初にも書いたのだが、その2年前にちょうどその前兆にあたる「ガス吹き出し」が起こった。 そのときも住民74人が死亡した。 第2章「ニオス湖で何が起こったのか」 著者は災害発生から6日後、政府から発行された「委嘱状」によりカメルーンへと渡った。 「有毒ガス災害にまつわる調査として」である。 初めて行くカメルーン、そこからニオス湖に向けての道、そして災害地への調査にまつわるエピソードをつづっている。 第3章「一九八七年ニオス湖災害国際会議」 第2章における調査をもとにカメルーン政府、国連開発計画(UNDP)、国連教育科学文化機関(UNESCO)らのスポンサーのもと「ニオス湖災害国際会議」が行われた。 その中でも意見交換が行われ、全容解明に向けての第一歩となった。 第4章「カメルーン火山列」 日本は様々な火山がある、いわゆる「火山大国」といわれているが、カメルーンも「火山列」と呼ばれるとおり、様々な火山が連なっている。 本章はその火山列を地学的な観点で考察を行っている。 第5章「ニオス湖の特異な化学組成と成層構造」 世界には様々な湖があり、その中の湖水の科学物質は異なっている。 中でもニオス湖は他の湖とは異なっているところを化学の観点から考察を行っているが、かなり専門的に突っ込んでおり、化学組成・成層構造について基礎がしっかりしていないと取っつきにくい章と言える。 第6章「湖水爆発の引き金は? 」 その「湖水爆発」の引き金はいったいどこからなのだろうか。 原因には二酸化炭素(CO2)の自然蓄積によるものと著者は推定している。 第7章「ニオス湖・マヌーン湖ガス抜き計画(NMDP)」 原因が推定し、いよいよ「対策」として「ガス抜き計画(NMDP)」がスタートした。 第5章から第6章にかけて、原因が特定するまで20年以上かかり、第7章の対策実行が行われたのは2001年。 いかに問題が複雑で、かつ国際的のパワー関係などが絡み、時間を要してしまったと言えよう。 第8章「湖水爆発の反復性と伝承」 ガス抜きを行ったニオス湖やマヌーン湖では昔から二酸化炭素がたまりやすい湖であった。 その理由は周辺に住んでいた民族が古くから伝わる「伝承」として残っている。 第9章「湖水爆発は日本で起こるのか」 本書の読むに当たり一番気になるのがこの「湖水爆発」が日本で起こるかどうかである。 何せ日本は「火山大国」と呼ばれている国である。 ニオス湖のような「火山湖」は「蔵王のお釜」や「草津白根山の湯釜」などが存在しており、とりわけ後者は1882年に噴火をしている。 しかし日本は四季折々の変化があり、ニオス湖のような「湖水爆発」はないと断定している。 その理由を本章にて詳しく説明している。 第10章「ニオス湖ダムは決壊するか? ー二重苦のニオス湖」 ニオス湖の周りには天然ダムが存在しているという。 湖が湖水爆発し、そのことによりダムが決壊すると、洪水がおこり、火山ガスと洪水という二重苦と隣り合わせの地域であるという。 第11章「発展途上国の抱える問題」 ガスの成分などフィールドワークを通した調査の中で「発展途上国」ならではの問題を肌で感じたという。 著者は1986年のニオス湖湖水爆発より20年もの間、定期的にカメルーンに渡り調査を続けてきた。 その中で気づいたこともあるのだが、様々な関わりによりここまで研究を続けることができた。 本書はその結晶と謝辞が詰まっている一冊と言える。 アーカイブ アーカイブ カテゴリー• 4,305• 332• 271• 451• 124• 105• 185• 149• 196• 1,149• 159• 105• 106• 472• 411• 197• 136• 331• 153• 118• 1,040• 328• 190• 273• 686• 530• 130• 277• 387• 125• 168.

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193~200ページを立ち読みしたら間違いなくレジに持っていく――犠牲者1700人の「ニオス湖の悲劇」とは

ニオス 湖 の 悲劇

恐ろしい・・・「湖水爆発」のメカニズム 火山の火口にできた湖で、 湖底に溜まった大量の二酸化炭素が突如噴出される現象が 「湖水爆発」です。 湖周辺の火山活動により地下のマグマ溜まりから炭酸ガスが発生。 それが水に溶け込み湖底から湧き出します。 湖水の下層二酸化炭素濃度が非常に高くなります。 (炭酸水のほうが比重が重いため下に溜まる。 ) なにかのきっかけで、突然水に溶けていた二酸化炭素がガス化して湖上に噴出。 (炭酸入りのジュースを振った状態が湖規模で起きたと思うと、凄まじい・・・) 湖周辺は一気に二酸化炭素が高まり、人や家畜が死亡したり、健康被害が出ます。 jica. html) 写真はニオス湖の湖水爆発後。 鉄分が酸化し赤く見えるんだそうです。 過去の「湖水爆発」被害と爪あと・・・ 1984年にアフリカ大陸、カメルーンにある ヌマーン湖で 周辺住民37人が死亡。 この時点で、まだ発生のメカニズムも分からず、近くのニオス湖で起きるという予見はありませんでした。 仮に起きても、限定的で、まさかあんな大惨事になるとは・・・。 1986年に同国、 ニオス湖でも発生。 夜9時という時間、電気もテレビもない住人達はほとんどが寝静まっていたのでしょう。 1746名が死亡 、死傷者4000名以上 、避難退去者20000名以上。 救助活動を行ったある神父は、こうつぶやいたそうです。 「村人の一部はベッドの中で眠るように亡くなっており、多くの人は家の外や道路で横たわるようにして死んでいた。 まるで生物だけを殺傷する中性子爆弾でも落とされたようだった」 湖周辺は危険地帯として居住が禁止され、住民達は今も戻れていません。 恐ろしいことです・・・。 紛争映画にもなったアフリカ大陸・ルワンダの キプ湖でも火山活動が活発で、湖水の炭酸ガスの濃度が高く危険視されています。 キプ湖は、カメルーンの2つの湖より圧倒的に大きく、 もし湖水爆発が起きれば200万人の周辺住人に被害が及ぶと考えられています。 (BBC報道より) 防災対策と日本 カメルーンの湖水爆発に対し、いち早く研究を進めたのが日本でした。 富山大学の日下部実客員教授(当時は岡山大学地球内部研究センター教授)は、1986年のニオス湖での災害直後に現地に入り、災害の原因究明に着手 日下部教授と日本の研究者が、カメルーンを行き来しながら研究を続け、1993年に湖水爆発の原因を突き止めました。 (ソース:) ただ、まだ二酸化炭素が流れこむ明確な経路や、爆発のきっかけなど不明な点もあり、今も研究が続いています。 現在もカメルーンの2湖は絶えず二酸化炭素が湖に供給されているそうです。 ニオス湖ではパイプによる湖水から二酸化炭素の除去作業が行われています。 これが日本のODA(政府開発援助)で行われているそうですよ。 二度と悲劇が起きないことを祈ります。 一方、ルワンダのキプ湖はかなりアグレッシブな方法を取っています。 下層の湖水に溶けているメタンガスを使って発電をしているそうです! 2,000万ドルをかけて発電所を建設。 すでに3. 6MWの発電をしていて、数年以内に50MWまで発電量を増やす予定。 ルワンダ政府は、アメリカの企業とメタンから100MWの発電をするべく契約を結んだそうです。 スゴいですね。 ルワンダは電力不足でもあり、住民の安全と電力の両方が得られるこの政策は合理的だと思えます。 安全面や環境アセスメントに疑問の声もあるそうですが、大きな反対もなく進んでいる模様。 事故なく、住民の住環境も良くなるのなら言うこと無しかと思います。 日本では発生しない? 日本は火山大国で、温泉も湖も多い。 最近は活動が活発な火山のニュースが頻繁だし・・・、心配になりますね。 日本では、 季節による気温の変化が大きいため、湖では対流があり二酸化炭素が湖水下層にとどまらず湖面から常に放出されているのだそうです。 確かに、日本一深い湖の田沢湖も火山湖ですが、湖水表面温度は夏は20度以上、冬は3度まで下がりますもんね~。 なるほど。 カメルーンは熱帯地域で、年間の気温変動が少ない故に起きた大惨事だったんですね。 二度と起きないことを、今一度祈ります。

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